日本人よ、目を背けるな。
あなたは日本のことをどう思っているだろうか。
ネットには母国日本を讃える動画などが溢れかえっている。
もちろん、私も日本人の一員として日本の長大な歴史や情緒ある風景を誇りに思っている。
しかし、どうも私たち日本人は盲目的に日本を信仰してしまっているようだ。
これは日本政府の姿勢や教育環境に問題があるのだろうが、少しでも日本が悪いというような動画や発言に対して、寄ってたかって非難する様子はもはや狂気的である。
大日本帝国の罪
前提
日本を解釈する上で戦前、戦後の区分は非常に重要である。
私はまず戦前日本の教育方針を知るために、大正7年から昭和7年まで国定教科書に定められていた尋常小學國語讀本を当たった。
その最終巻、第十二巻の第二十七課に「我が國民性の長所短所」という題がある。
この中で日本国民の長所として良性・美徳、熱烈な愛国心、穏健な性質が挙げられている。
一方で短所には奮闘努力の精神に乏しく、遊惰安逸に流れる傾きあり、雄大豪壯の氣風を養成するには適しない、さらに内向的、模倣的などが挙げられている。
つまり、日本人は良識的で優しいところがいい、しかし争うことには適さず、また努力に乏しい、ということである。
短所を真摯に受け止めている素晴らしい教育内容である。
この教育内容は戦争を機に一変する。
その最たる例が、皇民化教育である。
天皇を現人神として崇め、天皇の民である皇民日本人が、アジア周辺諸国を同化、支配し皇民化するという思想である。
言い換えれば帝国主義だ。
侵略による領土拡大を支柱としたこの思想は、それ以前の日本の国民性を否定している。
この思想をもとに日本は朝鮮半島を支配、その後中国への侵略を開始した。
南京大虐殺
そんな中1937年12月に起きたのが南京大虐殺だ。
まずこの事件を知らない人のために事件の概要を説明する。
南京大虐殺とは、日本軍が当時の中国の首都南京を占領した後に、約二ヶ月に渡って多数の中国軍捕虜、敗残兵、便衣兵(一般市民に扮した兵士)及び一般市民に不法な殺害、暴行、強姦、放火したとされている事件のことである。
この事件については戦後から現在まで様々な見解があり、論争が続いている。
論点は被害者の数であり、中国政府は約30万人、極東国際軍事裁判では約20万人、他にも様々な学者がそれぞれの見解を示している。
この事件をあったとする人が肯定派、事件の有無については肯定するが被害者数に懐疑的な人が中間派、事件はなかったとする人が否定派に分類されている。
私は中間派だが、現在の日本、特にネットには否定派がかなり多いように見受けられる。
比較・見解
事例
ホロコースト
まずこの事件を聞いて真っ先に連想されるのはナチスドイツのホロコーストだ。
ホロコーストについてはあまりに有名なために説明は省く。
現在、ドイツではこの惨劇を受け止め、ホロコーストを批判することは違法となっている。
また、それに関与したオランダでも現在のオランダ大統領マルク・ルッテが謝罪している。
ウイグル弾圧
次に連想されるのは中国のウイグル弾圧だ。
これは中国共産党がウイグル人を弾圧しているとされている事件だ。
中国共産党は現在もこの事実を否定し続けている。
日本人の姿勢
これらの事例に対する日本人の姿勢を検証してみよう。
ドイツのホロコーストについては日本でもアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所やアンネ・フランクの記した「アンネの日記」などが非常に有名である。
そのため、現在日本ではホロコーストを否定する人は全くと言っていいほど少ない。
だが、中国のウイグル弾圧についてはどうだろう。
この事例について象徴的なのは、BBC News JapanがYouTubeに投稿している駐英中国大使のウイグル人強制収容の否定動画へのコメントだ。
「これだけ、実際に迫害や拷問を受けた人からの証言が出ているのに、本当に狂ってる。」
「堂々と嘘をつく人間を映した貴重映像。」
他にもこの駐英中国大使や中国共産党に対する批判のコメントが溢れている。
確かにこの大使の発言は目に余るものがある。
しかし、自分はどうなのかを客観的に見る視点が欠落してはいないだろうか。
嫌悪感を抱いているこの中国大使の姿が、自分が南京大虐殺を否定する姿の鏡写だということになぜ気づかないのか。
見解
このような現状になっている原因について私なりの見解を示す。
私が考える最大の理由は戦後復興の方向性の誤りだ。
日独伊三国同盟における日本を除くナチスドイツ、イタリア王国ではそれぞれの独裁者アドルフ・ヒトラー、ベニト・ムッソリーニの死を以て戦後復興のスタートを切った。
しかし、日本では時の天皇、昭和天皇が裁かれることはなかった。
これは日本中からの反対の声があり、天皇を裁けば日本国内で反乱が生じるというGHQの判断が原因である。
つまり現在の日本の状況をドイツに置き換えると、ヒトラーの子孫が国の象徴を務めているということになる。
日本国民として天皇に反対意見を示すことは、無礼極まりないことは承知しているが、現状がそうなっているのだからしょうがない。
つまり、日本は戦後復興において天皇の存在を転換しなければならなかったのである。
伝えたいこと
ここまで南京大虐殺を例に日本人の歪んだ愛国心について書いてきた。
しかし、私は左翼の人間ではない。
由緒正しき日本国民であるからこそ、歴史を認め、被害者を思いやる懐の深さを持たなければならないのである。
争いは同じレベルの間でしか起こらない。
母国の失態を血眼になって否定することが日本国民のあるべき姿だとは思えない。
一説によれば、かの事件での強姦被害者は2万人から6万人にのぼるという。
我々にできることは、その悲劇を被った方々に胸を痛め、思いやることだけだ。
それができて初めて、我々は真の日本国民になることができるのだ。
日本人よ、もう目を背けるな。